北原の売り込まないマーケティング

ペルソナの変化 – プロファイルベースからカスタマージャーニーベースへ –

先日北原の精神と時の部屋でこんな質問をいただきました。

「なにをするにしてもペルソナ設定が必要になると思います。
ペルソナはどこまで細分化して考えれば良いでしょうか。
設定を細かくしすぎてしまうと、ターゲットが減ってしまうので、悩みにフォーカスするべきかと思っています」

この質問に対する僕の回答は、
「そもそもプロファイルベースでペルソナを設定しません」
です。

今日は僕のペルソナの考え方を詳しくお話させていただきます。

従来型、プロファイルベースのペルソナとは

プロファイルベースというのは、

  • 年齢
  • 業種
  • 勤務先
  • 居住地
  • その人の性格やエピソード
  • 仕事の役割
  • 目的
    etc…

このように細かく条件を絞り、特定の人物を想定したペルソナ(=顧客像)のことを指します。

プロファイルベースのペルソナの欠点

一般的なマーケティングでは常識とされているペルソナの設定ですが、実は実務において大きな問題を抱えています。

  1. 実態との乖離が大きい
  2. 柔軟性に乏しい
  3. 膨大な数のペルソナを抱え込む
  4. 思い込みを招く

それぞれ解説します。

①実態との乖離が大きい

最大公約数的、つまり、複数の人格から共通する部分だけを抽出した、都合の良いペルソナを描いてしまうため実在しないペルソナを設定してしまうリスクがある。

②柔軟性に乏しい

ひとりの人格を形成するため、多様なケースに対応できない。

③膨大な数のペルソナを抱え込む

ひとりひとりのプロファイルを作ろうと、よりリアリティを求めれば求めるほどペルソナの数が膨大になる。

④思い込みを招く

実務に落とし込む際、複数のペルソナを統合することで架空の顧客像を生み出すリスクがある。

 

つまり、実務上ひとりに絞り切れはしないのに「ペルソナはこういうものだ」という思い込みから無理やり絞ろうとして作ってしまうがゆえの問題です。

実際僕も無理やりプロファイルベースに当てはめてペルソナをつくっていました。
けれど、つくればつくるほど、違和感が溢れてくるんですよね。

考えてみれば当然です。顧客はひとりではないのですから。

多様な顧客をひとりの人格に当てはめて考えてしまうことにより、歪みが生じ、そのせいで仮設立案、および検証精度が落ちるのです。

僕たちはこれをペルソナ1.0としています。

これまでペルソナ1.0が通用していたのはなぜか

なぜこれまでは従来のプロファイルベースで成り立っていたか。

それは、情報の入手手段が限られていたからです。

以前はいわゆる4マス(=テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)が情報入手の手段でした。
皆が同じものを見て、同じルートを辿っていたんです。

20代が得る情報はこれ、30代が得る情報はこれ、というように一定の傾向が見られていました。

つまり、情報の偏りが行動の偏りを生み、ある程度プロファイルも限られたということです。

だからプロファイルベース、たったひとりを想定したペルソナでも通用していました。

でも今は違います。
インターネットでノンリニア(=繋がりのない断片的な)コンテンツを興味に応じてどんどん吸収できる時代です。

それぞれがそれぞれの思考と行動により、自らの意思で情報を選択し入手します。
なので、趣味嗜好、年齢などのプロファイルベースの行動の偏りがほとんどなくなっているのです。

人物ではなく行動にフォーカスしたペルソナ設定

これまでは、ひとりを想定すれば、多くが当てはまる時代でした。

しかし今はそうではなく、ひとりひとりが異なる思想をもち、異なる行動をします。

この前提に立ったペルソナの設定の仕方が、人物ではなく、行動にフォーカスしたペルソナ設定です。

行動にフォーカスしたペルソナとは、どういうことか。

こう考えた人が、次にこう動く、といった「認知から購買に至るまでのプロセス(=カスタマージャーニー)そのもの」をペルソナにするということです。

これをペルソナ2.0と呼んでいます。

実際にディアーズで行っているプロファイルの制限は性別のみ。
女性というセグメントだけです。

年齢、居住地、趣味嗜好、一切いれていません。

もはや従来のペルソナでは語れないんですよね。

言われてみれば、、、と思い当たるフシはありませんか?
美容室に限らず、あなたのサービスの顧客には、多種多様な人が存在するはずです。

わかりやすいように美容室で例えます。

30代主婦も髪の毛に悩みを抱えている
20代OLも髪の毛に悩みを抱えている
10代の学生も髪の毛に悩みを抱えている

もう、プロファイルでまとめられないんですよ。

美容室に来店するお客様はひとりではありません。
来店という1つのCVを描くのに、ひとりの人物では説明できないのです。

だから、人物ではなく、行動にフォーカスする必要があります。

ペルソナ2.0の利点

CVに至るルートは人の数だけ存在する、だからプロファイルベースのペルソナでは実務に耐えられない。

そこで登場したのが購買プロセス、行動をベースにしたペルソナでしたね。

行動をベースに考えることで実務でも利点が生まれます。

  1. 実態を正確に反映
  2. 高い柔軟性
  3. 高い施策立案精度

①実態を正確に反映

ひとつのCVルート、購買プロセスそのものをペルソナにすることで、ユーザーが認知から購買に至るまでの実態を正確に反映することができる。

②高い柔軟性

ひとりの人格ではひとつのルートしか描けなかったものが、行動にフォーカスしたことで多様なルートを表現できるようになる。

③高い施策立案精度

ひとつひとつのプロセスを細かく検証できるようになることで、施策の立案精度が上がる

 

これらは行動ベースのペルソナだからこそ得られる利点です。

木を見て森を見ず

焦点を絞りすぎると、まったく周囲の景色が見えなくなります。
これは言い得て妙だなと思うのですが、今回の話にピッタリではないでしょうか。

ひとりに固執し、鮮明に見ようとするあまり、周りが見えなくなる。

巷ではよく「たったひとりに刺さる文章を書けば他のユーザーも動く」と言われています。
ペルソナ1.0の文脈です。

僕たちはこの説は間違えていると考えています。

なぜなら、そのたったひとりとは誰を指すのか。
それすらも判然としないし、その正確性を証明することもできないからです。

仮に証明できたとしても、たったひとりを導き出すために捨てた多くのペルソナ(=顧客)は、導き出されたペルソナの軽く10倍以上いるはずです。

つまり、最適なペルソナを導けたとしても、たまたま狙ったひとりが最大公約数的な購買プロセスを通るプロファイルだった、ただそれだけなんですよね。

ペルソナ1.0の文脈では、他のペルソナを置き去りにすることになります。
これ事業運営では致命的ですよね。

本来獲得できる顧客をみすみす捨てている状態ですから。

ひとりではなく、ルートを分析検証し多くを正しく導けるのがペルソナ2.0です。

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